渡すまでから、のんだ後まで、というパラダイムシフト | 狭間研至コラムVol.2 PHBDesign株式会社
渡すまでから、のんだ後まで、というパラダイムシフト
パラダイムシフトというのは、ある時代に当然と考えられたいた思想や認識が、劇的に変わることを指すそうです。そういった意味では、薬局・薬剤師のパラダイムシフトは、いよいよ現実のものになろうとしているのではないかと感じています。
薬局というのは、医療機関のなるべく近くで開設し、患者さんが交付された処方箋を持ち込んでいただける環境を整備した上で、所属の薬剤師さんが正確・迅速に調剤し、わかりやすい服薬指導とともにお渡しした後、一連の行動を薬歴に記載する、というのが、一般的な認識ではないかと思います。
1974年の医薬分業制度に舵が切られ、1980年代後半から急速にこの概念は広まり浸透してきました。今や、年間8億枚を越える処方箋が発行され、7兆7千億円もの調剤費にまで膨らんだ、大きなビジネスになりました。そして、こういった処方箋調剤業務に特化した「調剤薬局」という薬局が我が国で一般的なものとなり、5万9千軒を越えるようになってきました。
このなかで、もちろん、小さな変化は色々と起こってきました。薬歴を記載したり、医師に情報を提供したりと、調剤報酬も10年ほど前と比べると少し複雑になり、薬剤師の業務もいくぶんは変わったのかも知れません。しかし、大きく変わらなかったのは、薬剤師が薬を患者さんにお渡しするまでを担当するということだったのではないでしょうか。
しかし、これが変わろうとしています。薬機法や薬剤師法の改正案では、薬剤師に服用後のフォローを(患者の状態に応じて)義務づけられる見込みになっています。さらには、お薬をお渡しするまでの業務の一つである「調剤」に対する報酬は、引き下げられる方向で議論が進められています。
つまり、薬剤師はお薬をお渡しするまでが担当だった仕事から、服用後まで患者をフォローするところまで担当する仕事に変わることが、法的にもビジネス的にも明らかになりそうなのです。
まさに、法律も、調剤報酬制度も、変更の日付がありますから、これは劇的な変化と言えるでしょう。
渡すまでから、のんだ後まで、というパラダイムシフトに対応するには、薬剤師のあり方、薬局のマネジメントを大きく変える必要がありますし、そこに戦略と戦術がなければ、当然のことながら混乱します。私自身が、自分の薬局でその混乱をもろに体験し、多くのスタッフや、患者さん、取引先の方々にご迷惑をおかけしました。ただ、それらの経験から、こうやればうまくいく、というポイントが見えてきたのも事実です。
薬局・薬剤師が、迫り来るパラダイムシフトへの備えを迫られる今、無用の混乱を来さないようなお手伝いができればと考えています。